長編

ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』②

「生徒会長の蛇だったとは……」 場所は変わって学園の生徒会室。「可愛いでちゅね。お肌ツルツル」 一人の男子がソファーに座っていて、カラフルな蛇に話しかけている。 防護服を着ている生徒がそのままの恰好で、紅茶が入ったカップと、クッキーを出して...
ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』①

数人の男子の声がする。「ポアリちゃん、大丈夫かな?溺れた人って、どう手当てするの?」「あれじゃない?こう両足を持って、逆さまにするやつ」「それ、喉に食べ物詰まらせた時」 自分は体のダルさで、動けずにいる。 転生です。 転生でございます。 こ...
ポアリの歩有

序 章 『努力と歩有と転生』

廊下の開いた窓から、涼しい風とそれに運ばれてきた祭囃子の音が聞こえる。 それはどこか下手糞で、時々リズムが崩れていたり、音の大きさが一定ではなかったりしていた。 どうやら、近くの公園で町内の子供達が、来週の祭りに備え、練習しているらしい。(...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』⑤

「今日はマユちゃん、顔色がいいねー。玉之丞もご機嫌そうだ」 控室で出会ったロビンソンはそう言い、玉之丞に額をくっつけ、挨拶を交わす。 蒼尾のほうはそれを静かに眺めており、少し気怠そうだ。『今日はマユの飛行機に乗るのー』「へぇ、よかったねー。...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』④

社宅の扉を強く叩く音で、マユは目を覚ます。 玉之丞を抱っこしながら、扉を開けると、そこには浩三と佐市の姿があった。 ちょっと出来上がっているようで、少し酒臭い。「お久しぶり!」「あー、ど、どうも――」 久しぶりに会う父の友人と、その息子に戸...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』③

玉之丞の尻尾がペチペチと顔に当たり、マユは目を覚ます。(思い出した、そうだった……にしても嫌な夢を見たな……後……何故、玉之丞が……) 彼は籠の中で眠っていたはずだと数秒考えるが、理由はすぐ分かる事だろう。(湿度、凄いな……) 雨が屋根や窓...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』②

北洋の指令室は、窓ガラスが張られ、周囲が見渡せるようになっている。「ねぇ、シラちゃん。もうやめよう……こんな事……北洋の工作員なら、東洋に亡命すればいいじゃない?新しい戸籍を作れば、新しい居場所が……」「駄目だ。私は北洋人として生まれ、生き...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』①

255年、終戦後 海上。 波は高く、揺れが大きい気がするが、海面を覗き込んでも、暗く波が見えない。 そんな中、空母『有馬』に乗ったマユは、夜風に吹かれ、体を震わせていた。「寒い……桑子、何か防寒具貸してよ……一個だけでいいから……」 という...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 第三章 『マユと蛹』⑤

「正解だなぁ。この色――」 翡翠色に染まった自身の機体を見て、マユはキラキラとした表情になる。 それを心なしか満足そうな顔で見ている久を桑子は冷めた瞳で眺めた。 そして、ふと気になったのだろう。桑子は久に質問を投げかける。「そういえば、この...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 第三章 『マユと蛹』④

宮司が屋台から焼き鳥を受け取り、モグモグと食べていると、テーブル席のほうで、エールの瓶に口を付けた桑子と、蕎麦を食べているキヌの姿が見える。「二人とも、マユさんは?」 宮司は団らんしている二人に声をかけた。「んー?旦那様がお仕事頼んでいたか...