2025-10

オメガバーズ

 終 章 『幸福の中の幸福』②

宗教勧誘に来た男の子、年齢より幼く見える彼と出会って、自分の運命は変わったんだと思う。 彼と出会わなければ、自分の心は無意識に死んでいって、漫画家という仕事も辞めていたと思う。(肇君、今でも君の姿を思い出すよ) 君と僕はお互い、運命の人では...
オメガバーズ

 終 章 『幸福の中の幸福』①

地元の少年に教えられた道を歩くと、歩かなければいけない方向に大きな坂があるのが見えた。それもとても急な坂だ。(何故、この町は坂ばかりなのだろうか……) 目の前の試練を見て、とてもがっかりする。「上らなきゃ駄目って……そんな……」 持っている...
オメガバーズ

 第八章『季節は巡る』③

入館料を払い、動物ゾーンに入り、動物を眺める。「あっ、可愛い」「本当だ、可愛い」 ポニーやアルパカを見て、癒される久間と自分はもうアラサー。(そういえば、自分に会いたい人物って、どんな人だろう……) 自分は久間と違って、こうメディアに出てい...
オメガバーズ

 第八章『季節は巡る』②

休載すると、漫画家はヒマなんだなぁ。 ベッドに寝転がりながら、そう思った。 平日の昼間は、志摩を仕事で家を空けており、自分は何をすれば分からない状態。(何をすればいいんだろう……) インフルエンザになった時に、状況が似ている。 最初は休みが...
オメガバーズ

 第八章『季節は巡る』①

四月の上旬、桜が咲き、入学式を終えた学生達が、青春、恋に心を躍らせていた。 そんな中、インドア派の小学生が始業式後、早く帰ってきたのをいい事に、ごろごろ、ごろごろと――カーペットが敷かれた床に寝転がり、タブレットで動画を見ている。「動画ばか...
オメガバーズ

 第七章『君の最後』⑧

話を終え、遺骨がある場所に移動する。 冷たい廊下では、息が白く、歩く度、手先と足先が痺れた。「肇はこの部屋にいるよ」 そう言い、扉を開くと、幼稚園児達が自分達に近寄ってきて甘えてくる。(可愛い、一人くらい連れて帰れないかな) まさかの遺骨を...
オメガバーズ

 第七章『君の最後』⑦

雪だらけの庭を抜け、建物に入ると、玄関の壁に折り紙で作った花が画鋲で貼ってあった。(孤児院って初めてくるな……) 通常なら、関わる事がない世界だろう。 靴を脱いでいると、彼はスリッパとモコモコしている靴下、未使用の物を渡してきた。「寒いから...
Uncategorized

 第七章『君の最後』⑥

「誰だったんだ?」「大家さんがこれ届けてくれて」 リビングに戻り、志摩に事情を話す。 大家さんが言ったとおり、充電は無く、電源ボタンを長押ししても、画面は付かなかった。 志摩が同じ差込口のケーブルを寝室から持ってきて、しばらく充電する。 思...
オメガバーズ

 第七章『君の最後』⑤

冬は、日が落ちるのが早い。 寂しい、嫌い。 大好きな人がいないのも悲しい。 好きな人が悲しんでいるのは、もっと―― スーツを着た一人のアルファが、総合病院内を走る。「漆!」 薄暗くなった病院の廊下にある長椅子で、一人の男性が項垂れていた。 ...
オメガバーズ

 第七章『君の最後』④

朝食を済ませた後、男子達は雪かき、女子達は家事と掃除をし始める。 雪かきといっても、そのうち皆ふざけ始めて、雪合戦に発展していく。「程々にしろよー。石とか氷入れるなよー」 雪で遊び始めた男子達にそう言い、空になったストーブの油タンクを持ち、...