2025-09

オメガバーズ

 第六章『愛』⑪

肇と一緒に家に帰ると、志摩が帰っていて、丁度ネクタイを外そうとしていた。「おかえり」「肇君、プレゼント渡したら?」「う、うん。志摩、これ――」 ラッピングされたネクタイが入っている紙袋を、肇は彼に手渡しする。「ありがとう。俺、何も用意してな...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑩

中に入ると、古い病院のような窓が付いたタイプの受付カウンターがあり、そこがガラリと開いた。 すりガラスの窓が立てる音に驚き、自分の肩が跳ねる。「だ、大丈夫?先生――」 自分が驚いたのを心配して、肇が声をかけてきた。「だ、大丈夫――」 肇とそ...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑨

映画が始まり、自分と肇はその内容に引き込まれた。 内容は記憶が無くなってしまう病にかかった少女と、不良少年との物語だった。 出会い、お互いの傷を癒し、感情が友情から愛に変わっていく。 だが、不良少年は交通事故で、命を落としてしまう。 その後...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑧

「志摩、この服変じゃないかな?」「この前も同じこと聞いた気がする」 志摩はそう言い、スーツのネクタイをしめるが寝ぼけているのか、うまく出来ずにいる。「もう……貸して……」 自分の服選びよりも、志摩のネクタイが気になり、志摩のネクタイに手を伸...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑦

クリスマス前日、肇は教会にある託児所の飾り付けを手伝っていた。「肇君、もう少し左」「はーい」 設置した脚立の場所をずらし、そこに上がる。 クリスマスツリーは設置しないが、星のオーナメントを複数飾り付ける。「いやぁ、肇君が手伝ってくれて助かる...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑥

「よかったの?これで――」 リビングで、帰る準備をしている城永に話しかけると、彼は頷いた。「いい、仕方がないし」「そうか……」 元旦那が警察に連行された後、城永が彼の人生を少しだけ話してくれた。 城永の元旦那であるあの男性は、良家生まれのア...
オメガバーズ

 第六章『愛』⑤

「これで大丈夫」 リビングで、アオイ少年の頭に大き目の鍋を被せ、紐で括る。「なんか変、落ち着かない」 そう呟く少年に、ジャンバーを着せ、ファスナーを閉めた。 城永も傍におり、その様子を微笑ましく、見守っている。「もし、ここにいる大人がみんな...
オメガバーズ

 第六章『愛』④

その時は意外と早く来た。 インターホンが鬼のように鳴り、それに志摩が出る。「はい、どなたですか?」 そこには志摩と同じくらいの身長で手足の長い、眼鏡をかけたアルファの男性がいた。 顔は整っているが、眼鏡の下の眉間にしわが寄っており、目つきも...
オメガバーズ

 第六章『愛』③

城永の元旦那は、怒ると手を付けられない人だったらしい。「アオイが生まれるまでは、良い人だったんだけど……」 リビングで城永の手当をする。 彼の青痣はかなり目立つもので、混乱していたとはいえ、これに気がつかなかったのは、申し訳なさを感じる。「...
オメガバーズ

 第六章『愛』②

恋人と別れる時は、実にあっさりしているものだった。 緊張しながら、城永に電話すると、彼は凄い勢いで謝ってきた。 罪悪感はあったが、別れ話をする。 その理由も話す。 すると、彼は涙混じり、嗚咽が時々入りながら言葉を出した。『ごめんね。ずっと辛...