2025-09

オメガバーズ

 第五章『陽キャ』②

「まぁ、そんな感じ。それで、自分も漫画が好きになって、こっちの世界に来たわけ」「久間先生――」 目尻がジーンとし、感極まっているのが自分でも分かる。自分の作品、初期のものは読者受けが良くなく、短期連載で終わった。それを好きだと、その作品がき...
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 第五章『陽キャ』①

陽キャ。陽気な人間、その名称をいう。「春島先生、シャッター切りますよ。さあ笑って!」 売れっ子漫画家が自分の肩を寄せ、編集者が構えたカメラに向かって笑顔を作る。 現在、午後二時過ぎ。 真っ白の壁紙の部屋は、とても無機質で冷たい印象で、そこに...
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 第四章『覚悟』⑨

リビングのテーブル前、定位置に座り、軽い食事を二人で取る。「すごく美味しそうだ」 志摩は自身の大きな口に青椒肉絲を箸で運んだ。「うまい」「デパ地下のやつって何でこんなに美味しいんだろうな」 怒っていると思っていた志摩は、そんな事が無かったよ...
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 第四章『覚悟』⑧

城永との買い物は、案外楽しいものだった。「まだ、時期早いからかな?マフラー売ってないね」「うん、そうだね」 ショッピングモールで、服屋を回り、コーヒー専門店を見つけ、二人で一服する。 そのコーヒーが思ったよりも数倍香ばしく、美味な物で、その...
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 第四章『覚悟』⑦

二人を見送った後、コスモスの花たちに囲まれ、志摩と肇は話をする。「どう?落ち着けた?」 志摩はそう言い、肇の顔色を窺う。「志摩、なんかごめんね」「どうした?何か、城永に意地悪な事されたか?」 志摩はトイレに行っていた為、状況がまだ分かってい...
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 第四章『覚悟』⑥

マップにはフラワーガーデンと表記されている。 周囲には沢山のピンク色のコスモスが咲き乱れていた。(絶景だなぁ……) ただ、目的はこの景色を見る為ではなく。「ちょっと、トイレ行ってくるわ」 花壇の近くにあるトイレだった。「早く行けよ。漏れそう...
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 第四章『覚悟』⑤

フードコートの野外席で、二人ずつ腰にかける。 自分は勿論、恋人である城永と一緒で、注文したハンバーガーを待つ。テーブルに付けてあるパラソルを眺めていると、店員が待ち番号札の番号を呼び、自分が席を立とうとすると、城永が取りに向かった。「僕、行...