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 第四章『覚悟』⑦

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 二人を見送った後、コスモスの花たちに囲まれ、志摩と肇は話をする。

「どう?落ち着けた?」

 志摩はそう言い、肇の顔色を窺う。

「志摩、なんかごめんね」

「どうした?何か、城永に意地悪な事されたか?」

 志摩はトイレに行っていた為、状況がまだ分かっていない様子だ。

 実際のところ肇は、仲間外れというか、城永にその場に置いてかれたのだが。

「ううん、違うんだ」

 肇は言う。

「本当は、ご飯食べた時から、少し具合が悪くて――」

「ゲロ吐きそうなん?」

 志摩はデリカシーが無く、そう言う。

「いや、違くて――動悸がずっとしているというか、その――」

 花壇前にあるベンチに二人で移動し、腰をかける。

 肇は城永への嫉妬で、少しおかしくなっていた。

『いなくなればいい』

 もし神様にそれが届いてしまったら。

 彼が自分の念で死んでしまったら。

 そう思ってしまった時、いつも通り、食事前にお祈りができなかった。

「えーと、そのお祈りするのを忘れて――」

 自身の闇とその事実は、肇は隠す。

(ずるいな……自分……)

 本当は違うのにと肇が思っていると、志摩が言う。

「神様がいるって自分は思った事ないけど」

「僕は二世だから、神様とか物凄く信じている訳ではないけれど、やっぱり罪悪感というか、そういうのがあるというか――」

 初めてその罪悪感を知ったんだけどと、肇はそう言う。

(苦しい言い訳だったかな――)

 だが、志摩は納得したようで、声を出す。

「あー。なるほど」

 そして、少し考える仕草をした後、志摩が言う。

「じゃあ、ちょっと早めの夕食にするか」

「えっ?何で?」

 肇は驚き、声を出すと志摩は笑いながら言う。

「もし、暗示によって体調を崩したのなら、夕食で二回分、祈れば体調が良くなるだろう」

 意外にも、それは名案だった。

「何食うよ?ハンバーガー?それとも、チェロス?」

 今回彼は沢山、食べ物を口にしていたはずだが、まだ食べたりない様子で、肇は苦笑いする。

「後、体調がそれでよくなったら、ゴーカートで遊ぼうな」

 後、遊び足りない様子。

 志摩はベンチから立ち上がり、肇の前に立ち、両手を差し出す。

(あー、志摩は優しいな。良い人だな――)

 肇は彼の両手を自身の手で掴み、立ち上がった。

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