二人を見送った後、コスモスの花たちに囲まれ、志摩と肇は話をする。
「どう?落ち着けた?」
志摩はそう言い、肇の顔色を窺う。
「志摩、なんかごめんね」
「どうした?何か、城永に意地悪な事されたか?」
志摩はトイレに行っていた為、状況がまだ分かっていない様子だ。
実際のところ肇は、仲間外れというか、城永にその場に置いてかれたのだが。
「ううん、違うんだ」
肇は言う。
「本当は、ご飯食べた時から、少し具合が悪くて――」
「ゲロ吐きそうなん?」
志摩はデリカシーが無く、そう言う。
「いや、違くて――動悸がずっとしているというか、その――」
花壇前にあるベンチに二人で移動し、腰をかける。
肇は城永への嫉妬で、少しおかしくなっていた。
『いなくなればいい』
もし神様にそれが届いてしまったら。
彼が自分の念で死んでしまったら。
そう思ってしまった時、いつも通り、食事前にお祈りができなかった。
「えーと、そのお祈りするのを忘れて――」
自身の闇とその事実は、肇は隠す。
(ずるいな……自分……)
本当は違うのにと肇が思っていると、志摩が言う。
「神様がいるって自分は思った事ないけど」
「僕は二世だから、神様とか物凄く信じている訳ではないけれど、やっぱり罪悪感というか、そういうのがあるというか――」
初めてその罪悪感を知ったんだけどと、肇はそう言う。
(苦しい言い訳だったかな――)
だが、志摩は納得したようで、声を出す。
「あー。なるほど」
そして、少し考える仕草をした後、志摩が言う。
「じゃあ、ちょっと早めの夕食にするか」
「えっ?何で?」
肇は驚き、声を出すと志摩は笑いながら言う。
「もし、暗示によって体調を崩したのなら、夕食で二回分、祈れば体調が良くなるだろう」
意外にも、それは名案だった。
「何食うよ?ハンバーガー?それとも、チェロス?」
今回彼は沢山、食べ物を口にしていたはずだが、まだ食べたりない様子で、肇は苦笑いする。
「後、体調がそれでよくなったら、ゴーカートで遊ぼうな」
後、遊び足りない様子。
志摩はベンチから立ち上がり、肇の前に立ち、両手を差し出す。
(あー、志摩は優しいな。良い人だな――)
肇は彼の両手を自身の手で掴み、立ち上がった。
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