フードコートの野外席で、二人ずつ腰にかける。
自分は勿論、恋人である城永と一緒で、注文したハンバーガーを待つ。
テーブルに付けてあるパラソルを眺めていると、店員が待ち番号札の番号を呼び、自分が席を立とうとすると、城永が取りに向かった。
「僕、行ってくるね」
城永はそう言い笑み、それがとても色っぽく感じる。
(さっきは険悪な雰囲気になっちゃったけれど、それ以外は完璧なんだよなぁ)
先程の件は、彼の性格も多く関わっているとは思うが、それ以前に自分の管理能力がかけていたのが問題だろう。
(もう、志摩と肇をデートに誘うのは、よした方がいいのかもしれないな――)
自分は良かれと思って二人を誘ったのだが、彼は二人きりで、恋人と過ごしたいタイプなのかもしれない。
「お待たせ」
そう言い、城永は自分と彼のバーガーが乗ったトレイを持ってくる。
「凄く美味しそうだよ」
そう言い、彼は席に着くと、自分にお手拭きを渡してくる。
それを受け取り触れると、それはウォーマーで温めていたのか、人肌ぐらいの温度でとても心地が良い。
秋風で涼しいからだろうか、とても穏やかな気持ちになった。とても癒される。
「はい、こっちが春島君のハンバーガーね」
受取り、そのハンバーガーに被り付くと、チーズのケチャップ、マスタードが肉と合わさり、口の中でハーモニーを生み出した。
「美味しい!」
アボカドも入っており、この場所でしか食べられない特別感を得る。
「ふふ、春島君。子供みたい」
城永はそう言い、自分の口元に付着したソースをナプキンで拭った。
彼は先程とは違いご機嫌なようで、自分はホッと胸を撫で下ろす。
(幸せだなぁ――)
恋人が、しかも自分がずっと求めた相手が目の前にいる。
微笑んで、自分を見つめてくれている。
自分は、こんな年齢になってしまったけれど、今やっと人並みの、普通の幸せを手に入れようとしていた。
そんな中、少し離れた席で志摩も注文したハンバーガーに被り付いた。
「うまい」
そう志摩が呟き、手に付着した照り焼きソースを猫のように舐める。
「肇は食べないの?」
「えっ?うん!勿論、食べるよ」
彼の前の席にいた肇は、それで我に返り、いつものように祈ろうとする。
だが、指を絡ませようとした瞬間、体を硬直させ、下唇を噛んだ。
だが、志摩は彼のその変化に気がつかず、目の前のハンバーガーに集中していた。
肇はお祈りをするのを止め、震える手でハンバーガーを口に運ぶ。
そして、被り付く。
何回か噛み、飲み込み、志摩に『美味しいね』と笑いかけた。
志摩はそれを肯定し、大きな口でハンバーガーを飲み込む。
志摩が注文した炭酸飲料がしゅわしゅわと容器の中で音を立てているのが、その二人の空間に響き渡った。
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