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 最終章『ハイキングだ!泉だ!これが愛の鞭だぁ!』④

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 彼らの事が心配で覗くと、アクアが木に登り、持っていたナイフで網を切ろうとしていた。

「ねぇ、木と括り付けられている縄をナイフで切ったら、落ち――」

 大河は思いっきり、その場に落下した。

 それを見て数秒後、アクアが言う。

「なんか言ったか?」

「何でもない――」

 大河は目を回しながら、そう呟く。

 そんな彼を心配し、ケルモドがペロペロと顔を舐めていた。

 ここからは彼らの冒険で。

「うぉっ、危なっ!」

「えっ!おわぁっ!」

 川の岩を渡り、反対側に行こうとして、落ちそうになったアクアが大河の服を掴み、大河だけが体勢を崩し川に落ちたり。

「いけ!シャイニング・ウェーヴ!」

「あたっ!」

 アクアが間違って破壊した木の破片が大河の頭にぶつかったり。

 蜂に追いかけられたり、電流が走ってビリビリしたり、また罠でつるし上げられたり。

 そんな事が何回も何回も起こった。

「もう異世界ヤダ……おうち、帰りたい……」

「きゃん!」

 ケルモドを抱っこしながら、草原に体育座りをしている大河。

「そんな事言うなって、もうすぐ目的地につくぞ」

「どの口が言ってんのかなぁっ?」

 その隣に腰をかけるアクアに苛立ちながら言う。

(そりゃあ、そうだよ……)

 アクアは罠を作動させるが、アクアは無傷。

 一方、大河は巻き込まれでボロボロだった。

「強く生きるんだよ。大河君……」

 そう生徒会の三人と隠れながら、彼を応援する。

 すると、アクアは大河にこんな話をし始めた。

「そういえば、目的地の泉なんだけど。すげぇ、泉らしいぜ。聞きたい?」

「一応、聞く……」

 そう、大河は知らないのだ。

 何の病でも怪我でも治せる泉だという事を。

「何の願いでも叶えてくれる泉らしいぜ」

 アクアは、ガセ情報を掴まされていた。

「えっ、マジ?」

「マジ、マジ」

 大河は凄く驚いた顔をし、アクアはそれに頷く。

(そう勝手に信じられて、お願いされて泉は迷惑だろうな……)

 そう思い、二人の様子を窺う。

 すると、アクアは自分が今一番気になっている事を大河に訊いた。

「で、お前は元の世界に戻るの?さっき、そう言っていたけれど」

「本当はそうしたいいんだけど……でも、何の願い事でも叶うんなら、別のにしようかな?」

 大河は、秋空を眺めながら言う。

「帰らないのか?」

「だって、アーノルドさんやセゾンさんが帰る方法見つけてくれそうだし。何の願いでも叶えてくれるのなら、この機会じゃないと叶わないのにするよ」

 そして、彼の口から驚きの言葉が出る。

「元の世界で幼馴染が死んでしまったから、生き返らせたいんだ」

 そう言った。

 その瞬間、私の瞳から涙が流れ落ちた。

「ポアリちゃん?」

「大丈夫?」

 そう生徒会の二人が自分の心配し、声を出す。

「いや、大丈夫。目にゴミが入っちゃって……」

 私は服の袖で、涙を拭き取った。

「そいつ、女?」

「うん、女の子」

 アクアと彼は、転生前の自分の話をしている。

 だが、二人共それには気が付いていない。

「それは何で?その子の事が好きだったのか?」

「いや、仲は良かったけれど。全然、そういうのではないよ。それに好きな子は別にいたから。あぁ、後その好きな子には嫌われちゃったんだけどね」

 大河はそう言い、困った顔をした。

「その子が交通事故でいなくなってさ。それで好きな子が病んじゃって、自分も、自分の事で精一杯で。結局、それぞれ別の道を歩く事になった。ずっと三人で一緒にいたけど、彼女の中で僕は要らなかったみたい」

 悲しいけどねと笑いながら大河が言う。

「だから。死んだ幼馴染を生き返らせて、彼女に元気になってほしい」

 大河がそう言うとアクアが言った。

「でもさ。その死んだ幼馴染はさ、多分お前の事大好きだったと思うぞ」

 その言葉に驚き、大河が目を見開く、アクアの赤毛が瞳に映っているのが、離れた場所から様子を窺っている自分にも見える。

「女ってやつは、女だけの世界を作るんだ。その方が気を使わなくて、楽だからな」

 秋の風が彼の赤茶色い前髪を揺らす。

「だけど、男のお前もそれに入っている。という事は、お前が好きだった子ではなく、その死んでしまった子が好きだったという事だ。お前が必要だったって事だ」

「何それ、恋愛した事ない人に言われたくない」

 彼の言う通り、アクアはずるいと思う。

「願い、叶うといいな」

 そう言い、立ち上がり背伸びをするアクア。

 それを見て大河も、ケルモドを抱っこした状態で立ち上がる。

『さてさて、二人共。行きましょう、もうすぐ目的地ですよ』

 セゾンが頃合いを見て出てきて、話しかける。

 再び、二人で歩き出す。

 自分達もばれないように気を付けながら、それを追う。

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