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 第三章『憧れとの再会』③

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「ラストオーダーのお時間ですけど、追加注文ございます?」

「皆、ラストオーダーだって!追加の飲み物頼む人は頼んじゃって」

 店員が村雲にそう知らせに来て、彼は全員に届く声でその場に言うが、皆出来上がっており、話を聞いていない。

「とりあえず、生ビールとハイボールが十五個ずつで……後、お冷も同じ数……」

「お冷は三十で足りますかね……」

 店員と冷めた目で周囲を見ている村雲。

 という自分も結構出来上がっており、くだらない会話を永遠と城永としていた。

「ねぇ、漫画って、どんな感じのを描いてるの?」

「えー、内緒」

「えー、ずるい。話してくれるまで、こちょこちょの刑だ!」

 そう言われ、くすぐられ、悶えている自分は、完全に出来上がっていた。

「ふふふ、どうだ参ったか!」

 村雲にはどう見えていたかは不明だが、凄く幸せだった。

「ほらほら、二人共お冷持ってきたよ」

「あー、ありがとう」

 自分が村雲から水を受け取った時、酔っている為か、隣にいた城永の足にかかる。

「あっ、ごめん」

 テーブルに水の入ったジョッキを置き、ハンカチをズボンから取り出した。

「よかったら、これ」

「別に気にしなくてもいいからね。少し濡れただけだし……」

 彼はそう言いながらも、ハンカチを受け取り、濡れた部分に当てる。

「村雲、僕もお冷貰っていい?」

「はい、どうぞ」

 村雲から水を受け取り、それを一気飲みする城永を真横で眺める。

 ゴクゴクと水が喉を通るたびに、喉仏が動き、それがとても色っぽい。

(やっぱり、綺麗だな……)

 小学生の頃から、女子や母親たちから、美少年と言われていたが、やはり大人になっても美形だ。

 しかも、結婚して、子供もいる為、属性が追加されていて、色気が出ている。

(うわぁ、感動する……来てよかった……)

 今度の漫画のネタは、人妻で決まりだ。

(勿論、首に噛み跡も付ける)

「ん?何?」

 彼が自分の視線に気がつき、声を出した。

「いや、別に……」

 視線を逸らす。

 そして、それを誤魔化すように、近くにあったジョッキを一気飲みする。

 すると、頭にアルコールが上り、クラクラと視界が回り出した。

「それ志摩が飲んでいた焼酎のソーダ割りじゃない?」

 村雲がそう言うがもう遅く、自分は真後ろに倒れ、意識を手放す。

「二次会行こうぜ!」

「二次会いいね!」

 村雲は二次会をセッティングしていないらしく、更に飲みに行きたい人は個人でお任せスタイルだった。

「煙草、煙草――」

 志摩は煙草が吸いたくてたまらなく、会計を済ませ、居酒屋の前で速攻煙草を咥えた。

ライターで火を付け、一息。

「ふぅ――」

 そんな中、一人のオメガの男性が志摩に声をかけてきた。

 そのオメガは、志摩と一緒にカラオケをした同級生の一人なのだが、両目尻に涙ボクロがある。

「ねぇ、志摩。この後、飲み行くの?」

 それは甘えた猫のようで、近づいてきて、胸や腕に小柄な体や頬、頭をすり寄せてくる。

「行かないけど、何で聞くんだ?」

「分かってるくせに――可愛い」

 そう言い、志摩の手を取り、指を甘噛みする。

(あー、漆こういうの好きそう)

 そして数秒、指を吸ったり、舌を絡ませた後、口を離した。

 唾液が線を引く。

「皆で騒ぐのが嫌なら、二人で静かに飲める店に行こうよ」

「いや、漆と帰るから」

 そう即答するが、彼も負けられないと思ったのか、引かない。

「じゃあ、漆君も一緒ならいいじゃない?」

「うーん、どうだろう。漆、確か用事があったから――」

 周囲を見渡すが、漆の姿が見当たらない。

「あれ?」

 志摩は先程まで一緒に居たであろう村雲に話しかける。

「村雲、漆が何所にいるか知らないか?」

「えっ?さっきまで、城永が介抱していたけど……」

 村雲も驚いた顔をし、周囲を見渡した。

 城永の姿も、その場に無い為、二人でどこかに移動したのだろうとの事だ。

「じゃあ、二人で飲み直そうよ。ね、ね?」

(どうしよう、家に戻っても会えないだろうし……)

 志摩は眉間にしわを寄せ、険しい顔をしていると、村雲が言う。

「じゃあ、二人共。うちに来なさいよ。サービスするわよ」

「えー、二人きりが良かったんだけど……」

 隣のオメガはそう言うが、志摩が村雲の店に行く事になった。

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