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 最終章『ハイキングだ!泉だ!これが愛の鞭だぁ!』②

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 大体、ハイキングや遠足は山頂で待ち合わせをし、そこに向かうのが目的だ。

 だが、今回は違うそうで、目的地(例の泉)に行って、出発地点であるここに、時間までに戻ってくるというものらしい。

 そして、ルールはたった一つ。

 一年生と二年生がペアになる事。

 このハイキング、自由度は高めで、それ以外何をしてもいいという。

 組む相手は選んでいいし、使い魔や魔法石、魔法も自由に使いたいタイミングで使っていい。目的地の泉に行ければ一番良しだが、興味とやる気がないなら、ずっとここにいていいという。

スタートとゴールが同じ場所なので、こんな感じだ。

(すげぇ、学園側がやる気なし……)

 頑張りたくない生徒はもう既に、その場にレジャーシートを広げて、友達と寛ぐ気で、茶器を広げている。

(一部の生徒もやる気なし……)

 魔法学校のイベントだから、もっと過酷なものだと思っていたが、緩くて楽しいものになりそうだ。

 山の入り口までは、教師と一緒に歩き、そこに辿り着くと、お互いペアになりたい人物を探し、声をかける。

 自分は一年生何人かに声をかけられていたが、空気を読まないアクアがズカズカ入って来て、私と大河を回収していった。

「きゃん!」

「ほらケルモド、おいで」

 そう言い、大河は尻尾をブンブン振るケルモドを抱き上げる。

「山道は辛いからね。人生みたいに」

 彼は、また闇深い言葉を発する。

(彼は何で、異世界入りしてから、こんなにナイーブなんだろう……)

 それと対になって、アクアは明るく冗談を言った。

「山あり、谷あり、ポアリって感じ!」

 その際、アクアは私の体に軽く体当たりする。

「うまい事言った雰囲気で話さないでくれる?うまくないんだよ」

 そう私は彼に言い、ハイキングのコースのマップを広げた。

 マップは事細かに書かれていたが、非常にざっくりとしたものだった。

 川の場所、滝の場所、目印の岩、目的地は描いてあるが、本来描かれてなければならない道というものが、描かれていない。

 今いる大きい道すらだ。

(これ、遭難する生徒が出てくるんじゃないか?)

 そう思うくらいだった。

 しかも、私達生徒は、一年生も二年生も、荷物というものを持たされていない。

 食料も水も無く、あるのは魔法石だけ。

「ポアリ、早く行こうぜ!」

「早く、行こ!」

 アクアと大河がそう言い、自分を急かす。

(まぁ、最悪道に迷ったら、アーノルドさんとセゾンさんに、ナビしてもらおう……)

 そう思いながら、彼らについて行く。

 ――三十分後。

(道に迷った――)

 自分はそう思いながら、整備されていない山の中、立ち止まっている。

 

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