スポンサーリンク

 最終章『ハイキングだ!泉だ!これが愛の鞭だぁ!』⑧

スポンサーリンク

 そこにいたのは金髪姿で、眼鏡をかけている男子だった。

(あぁ、そうだ。彼だったんだな……)

 自分が溺れていた時に助けてくれたのは。

「本当にありがとうな」

 私が一番ありがとうって言わなきゃいけないのに、話をさせてくれない彼に苛立ちを覚える。

「私はそんな人間じゃないよ!」

 その場に、その声が響き渡る。

 皆の視線が自分の方に向くが、それに気がつかないで話をする。

「本当は楽をしたいし、頑張らなくても評価されたい、後モテたいんだよ!」

 そう言われたフォーレンは、自分がそんなことを言う人間だとは知らなかったのだろう。

 しばらく考えた後、我に返ったのか、頬をつねる。

「痛てててて――」

「何を図々しい、モテたいなんて!これ以上……」

 そう言うフォーレンだったが、何を言いたいかよく分からない。

 だが、少し怒っているのは分かる。

 そして、すぐ誰かが駆ける音が聞こえた。

『あっ!アクア君、何を!ポアリさん、アクア君がそっちに!』

 セゾンの焦った声がその場に響き、その方向を見ると、アクアが変なテンションで、自分のほうに全力疾走していた。

「ちょ、アクア!な、なにを!」

 セゾンと似たようなことを思わず口にする。

 そして案の定、アクアが私にタックルをした。

「おらっ!」

「だっ!」

 ゴロゴロ転がり、枯れ葉の山に自分は突っ込んだ。

「ストライク!」

「あぁ!馬鹿!」

 ガッツポーズをするアクアに怒り、大河は枯れ葉だらけになり、仰向けになっている私の元に駆け寄った。

 秋の晴天が良く見え、体の痛みを忘れる。

(あー、空が綺麗だ……)

 元の世界と同じように赤いトンボが飛んでいるのが見える。

 すると、大河も横に転がる。

「空、綺麗だね。空気も美味しいし」

 彼は横で、ニコリと微笑む。

『大河君も体調よくなりますからね』

 アーノルドが大河に言い、励ます。

「うん、そうだね」

 その姿はとても尊く、純粋無垢だ。

 自分は照れ、空から視線を逸らせなくなると、聞きなれた声が聞こえた。

「みんな!集合時間過ぎているから、迎えに来ちゃった!」

 自分は体を起こすと、ロベルトが少し離れた場所から呼んでいる。

 それで皆、身支度をし、彼の方に集合した。

「そろそろ、日が暮れちゃうんだからね」

 ロベルトはそう言い、近くにいた自分のほうに駆け寄る。

 そして、肩についていた落ち葉を手に取る。

「ポアリちゃんから僕へのお土産ね」

「違うよ」

 そう言うが、彼はニコニコとしながら言う。

「じゃあ、泉の精霊さんが僕の願い事を叶えてくれたのかな?」

「お前か、アクアに嘘の情報を渡したのは……」

 そう言うと、彼は意地悪そうに言った。

「でも、僕はちゃんとお願い事叶えて貰ったよ?ポアリちゃんからのお土産がほしいって」

 呆れて見上げた空は、やはり高く晴天だ。

 そして、空気も澄んでいる。

 私の異世界、生活はまだ始まったばかりだった。

 『ポアリの歩有』完  

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました