そこにいたのは金髪姿で、眼鏡をかけている男子だった。
(あぁ、そうだ。彼だったんだな……)
自分が溺れていた時に助けてくれたのは。
「本当にありがとうな」
私が一番ありがとうって言わなきゃいけないのに、話をさせてくれない彼に苛立ちを覚える。
「私はそんな人間じゃないよ!」
その場に、その声が響き渡る。
皆の視線が自分の方に向くが、それに気がつかないで話をする。
「本当は楽をしたいし、頑張らなくても評価されたい、後モテたいんだよ!」
そう言われたフォーレンは、自分がそんなことを言う人間だとは知らなかったのだろう。
しばらく考えた後、我に返ったのか、頬をつねる。
「痛てててて――」
「何を図々しい、モテたいなんて!これ以上……」
そう言うフォーレンだったが、何を言いたいかよく分からない。
だが、少し怒っているのは分かる。
そして、すぐ誰かが駆ける音が聞こえた。
『あっ!アクア君、何を!ポアリさん、アクア君がそっちに!』
セゾンの焦った声がその場に響き、その方向を見ると、アクアが変なテンションで、自分のほうに全力疾走していた。
「ちょ、アクア!な、なにを!」
セゾンと似たようなことを思わず口にする。
そして案の定、アクアが私にタックルをした。
「おらっ!」
「だっ!」
ゴロゴロ転がり、枯れ葉の山に自分は突っ込んだ。
「ストライク!」
「あぁ!馬鹿!」
ガッツポーズをするアクアに怒り、大河は枯れ葉だらけになり、仰向けになっている私の元に駆け寄った。
秋の晴天が良く見え、体の痛みを忘れる。
(あー、空が綺麗だ……)
元の世界と同じように赤いトンボが飛んでいるのが見える。
すると、大河も横に転がる。
「空、綺麗だね。空気も美味しいし」
彼は横で、ニコリと微笑む。
『大河君も体調よくなりますからね』
アーノルドが大河に言い、励ます。
「うん、そうだね」
その姿はとても尊く、純粋無垢だ。
自分は照れ、空から視線を逸らせなくなると、聞きなれた声が聞こえた。
「みんな!集合時間過ぎているから、迎えに来ちゃった!」
自分は体を起こすと、ロベルトが少し離れた場所から呼んでいる。
それで皆、身支度をし、彼の方に集合した。
「そろそろ、日が暮れちゃうんだからね」
ロベルトはそう言い、近くにいた自分のほうに駆け寄る。
そして、肩についていた落ち葉を手に取る。
「ポアリちゃんから僕へのお土産ね」
「違うよ」
そう言うが、彼はニコニコとしながら言う。
「じゃあ、泉の精霊さんが僕の願い事を叶えてくれたのかな?」
「お前か、アクアに嘘の情報を渡したのは……」
そう言うと、彼は意地悪そうに言った。
「でも、僕はちゃんとお願い事叶えて貰ったよ?ポアリちゃんからのお土産がほしいって」
呆れて見上げた空は、やはり高く晴天だ。
そして、空気も澄んでいる。
私の異世界、生活はまだ始まったばかりだった。
『ポアリの歩有』完
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