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 第四章『覚悟』③

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 遊園地は子供向けの施設かと思っていたが、思ったより、楽しめた。

 高所恐怖症の志摩が、ジェットコースターに乗りたいと言い出した時は、物凄く腹が立ったが、それ以外はとても良かった。

「ねぇ、春島君。お化け屋敷入ろうよ」

 城永はそう言い、お化け屋敷を指差す。

 その方向を見ると、墓場と妖怪、幽霊がモチーフの一般的な遊園地のお化け屋敷って感じの看板が目に入る。

(幽霊美少女と寺生まれとの、成仏エッチというのもいいかもしれない)

 何でもエロ同人のネタにしようとするのは、完全に職業病である。

 周囲を見渡し、志摩と肇を探す。

 二人はクレープ屋の前におり、展示されている食品サンプルを眺めていた。

 どうやら二人は、注文するクレープを選んでいるらしい。

 二人に声をかけようとすると、城永は自分の袖を掴み、クイクイと引っ張った。

「後で、電話すればいいじゃん。内緒で入ろうよ」

 城永はそう言い、しぃーと口元に人差し指を添える。

「そうだね。いいよ、入ろう」

 そう言い、お化け屋敷の入り口に二人で向かう。

 入り口の従業員は、機嫌が悪そうな若い男性で、手首に付けたフリーパスのバンドを見せると、愛想無く、ゲートを開けた。

 二人で中に入ると、そこは薄暗く、外とはまた違うひんやりとした空気が肌に触れる。

「少し冷えるね」

「うん、そうだね」

 そう言い、城永に自分から手を伸ばすと、彼も手を伸ばしてくれ、指を絡ませた。

「これで寒くないね」

 城永はそう言い、笑う。

「城永君はこういうアトラクション、好きなの?」

「ううん、二人きりになりたかったから」

 自分達しかいないタイミングでこっそり、キスしていきたりした。

 その際、舌も少し入ってきたし、自分の体を城永は愛で、触れた。

 唇が離れる時、お互いの唾液が混ざったものが、宙で線を引いた。

「ねぇ、また僕の家に泊まりにきてよ」

 愛を表現できない状況に、虚しさを感じながら、再び手を握る。

(自分はこれがいいんだなぁ……)

 自分は、とても納得できた。

 肇が口づけした頬が少しむず痒い気がする。

 そして、それに伴って背徳感が自分を支配していた。

(恋人同士、いちゃつくのは当たり前なんだから、背徳感なんて変だ――)

 何故、自分は浮気しているような気持ちになっているのだろう。

 そう思っていると、城永は再び頬に口づけをした。

 そこは肇がキスをした頬で、城永のその行為が彼との事実を塗りつぶしたようだ。

『ふふ、二人には内緒』

 肇が発した言葉が頭に過る。

 お化け屋敷のお化けを全部、無視して、城永と出口に向かった。

 外に出ると、再び金木犀の匂いが鼻に届く。

「あっ、先生。おかえりなさい」

 クレープを持った肇が言葉を出す。

 気がクレープから逸れたその瞬間、志摩は肇が持っているチョコバナナクレープに噛り付いた。

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