遊園地は子供向けの施設かと思っていたが、思ったより、楽しめた。
高所恐怖症の志摩が、ジェットコースターに乗りたいと言い出した時は、物凄く腹が立ったが、それ以外はとても良かった。
「ねぇ、春島君。お化け屋敷入ろうよ」
城永はそう言い、お化け屋敷を指差す。
その方向を見ると、墓場と妖怪、幽霊がモチーフの一般的な遊園地のお化け屋敷って感じの看板が目に入る。
(幽霊美少女と寺生まれとの、成仏エッチというのもいいかもしれない)
何でもエロ同人のネタにしようとするのは、完全に職業病である。
周囲を見渡し、志摩と肇を探す。
二人はクレープ屋の前におり、展示されている食品サンプルを眺めていた。
どうやら二人は、注文するクレープを選んでいるらしい。
二人に声をかけようとすると、城永は自分の袖を掴み、クイクイと引っ張った。
「後で、電話すればいいじゃん。内緒で入ろうよ」
城永はそう言い、しぃーと口元に人差し指を添える。
「そうだね。いいよ、入ろう」
そう言い、お化け屋敷の入り口に二人で向かう。
入り口の従業員は、機嫌が悪そうな若い男性で、手首に付けたフリーパスのバンドを見せると、愛想無く、ゲートを開けた。
二人で中に入ると、そこは薄暗く、外とはまた違うひんやりとした空気が肌に触れる。
「少し冷えるね」
「うん、そうだね」
そう言い、城永に自分から手を伸ばすと、彼も手を伸ばしてくれ、指を絡ませた。
「これで寒くないね」
城永はそう言い、笑う。
「城永君はこういうアトラクション、好きなの?」
「ううん、二人きりになりたかったから」
自分達しかいないタイミングでこっそり、キスしていきたりした。
その際、舌も少し入ってきたし、自分の体を城永は愛で、触れた。
唇が離れる時、お互いの唾液が混ざったものが、宙で線を引いた。
「ねぇ、また僕の家に泊まりにきてよ」
愛を表現できない状況に、虚しさを感じながら、再び手を握る。
(自分はこれがいいんだなぁ……)
自分は、とても納得できた。
肇が口づけした頬が少しむず痒い気がする。
そして、それに伴って背徳感が自分を支配していた。
(恋人同士、いちゃつくのは当たり前なんだから、背徳感なんて変だ――)
何故、自分は浮気しているような気持ちになっているのだろう。
そう思っていると、城永は再び頬に口づけをした。
そこは肇がキスをした頬で、城永のその行為が彼との事実を塗りつぶしたようだ。
『ふふ、二人には内緒』
肇が発した言葉が頭に過る。
お化け屋敷のお化けを全部、無視して、城永と出口に向かった。
外に出ると、再び金木犀の匂いが鼻に届く。
「あっ、先生。おかえりなさい」
クレープを持った肇が言葉を出す。
気がクレープから逸れたその瞬間、志摩は肇が持っているチョコバナナクレープに噛り付いた。
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