オメガバーズ(BL)

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 第七章『君の最後』②

オメガの就活は、過酷である。 体質上、体調を崩しやすかったり、妊娠、出産で産休、育休を取る可能性を考慮されるからだ。 肇は、キャリアセンターに通い、求人情報を見ていくが、高卒で、資格不要のもので、正社員が殆ど無い。(あー、自分って恵まれてい...
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 第七章『君の最後』①

年が明けた。 世がお正月休み、新しい年をお祝いしている中、信者の田中さんが死んだ。 主人の不倫が許せず、睡眠薬を飲ませ、自分と一緒に車で練炭自殺。(新年早々、葬式か……) 今日は葬式のスタッフとして、教会で仕事。 葬式に集まった人の受付をし...
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 第六章『愛』⑪

肇と一緒に家に帰ると、志摩が帰っていて、丁度ネクタイを外そうとしていた。「おかえり」「肇君、プレゼント渡したら?」「う、うん。志摩、これ――」 ラッピングされたネクタイが入っている紙袋を、肇は彼に手渡しする。「ありがとう。俺、何も用意してな...
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 第六章『愛』⑩

中に入ると、古い病院のような窓が付いたタイプの受付カウンターがあり、そこがガラリと開いた。 すりガラスの窓が立てる音に驚き、自分の肩が跳ねる。「だ、大丈夫?先生――」 自分が驚いたのを心配して、肇が声をかけてきた。「だ、大丈夫――」 肇とそ...
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 第六章『愛』⑨

映画が始まり、自分と肇はその内容に引き込まれた。 内容は記憶が無くなってしまう病にかかった少女と、不良少年との物語だった。 出会い、お互いの傷を癒し、感情が友情から愛に変わっていく。 だが、不良少年は交通事故で、命を落としてしまう。 その後...
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 第六章『愛』⑧

「志摩、この服変じゃないかな?」「この前も同じこと聞いた気がする」 志摩はそう言い、スーツのネクタイをしめるが寝ぼけているのか、うまく出来ずにいる。「もう……貸して……」 自分の服選びよりも、志摩のネクタイが気になり、志摩のネクタイに手を伸...
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 第六章『愛』⑦

クリスマス前日、肇は教会にある託児所の飾り付けを手伝っていた。「肇君、もう少し左」「はーい」 設置した脚立の場所をずらし、そこに上がる。 クリスマスツリーは設置しないが、星のオーナメントを複数飾り付ける。「いやぁ、肇君が手伝ってくれて助かる...
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 第六章『愛』⑥

「よかったの?これで――」 リビングで、帰る準備をしている城永に話しかけると、彼は頷いた。「いい、仕方がないし」「そうか……」 元旦那が警察に連行された後、城永が彼の人生を少しだけ話してくれた。 城永の元旦那であるあの男性は、良家生まれのア...
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 第六章『愛』⑤

「これで大丈夫」 リビングで、アオイ少年の頭に大き目の鍋を被せ、紐で括る。「なんか変、落ち着かない」 そう呟く少年に、ジャンバーを着せ、ファスナーを閉めた。 城永も傍におり、その様子を微笑ましく、見守っている。「もし、ここにいる大人がみんな...
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 第六章『愛』④

その時は意外と早く来た。 インターホンが鬼のように鳴り、それに志摩が出る。「はい、どなたですか?」 そこには志摩と同じくらいの身長で手足の長い、眼鏡をかけたアルファの男性がいた。 顔は整っているが、眼鏡の下の眉間にしわが寄っており、目つきも...