神様に愛されている君へ

オメガバーズ

 第六章『愛』③

城永の元旦那は、怒ると手を付けられない人だったらしい。「アオイが生まれるまでは、良い人だったんだけど……」 リビングで城永の手当をする。 彼の青痣はかなり目立つもので、混乱していたとはいえ、これに気がつかなかったのは、申し訳なさを感じる。「...
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 第六章『愛』②

恋人と別れる時は、実にあっさりしているものだった。 緊張しながら、城永に電話すると、彼は凄い勢いで謝ってきた。 罪悪感はあったが、別れ話をする。 その理由も話す。 すると、彼は涙混じり、嗚咽が時々入りながら言葉を出した。『ごめんね。ずっと辛...
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 第六章『愛』①

洗い物を終え、リビングのカーペットを掃除用の粘着ローラーで綺麗にしていると、玄関から志摩の声が聞こえた。 自分が玄関まで迎えに行くと、志摩の耳は寒さからか赤く、巻いていたマフラーをしていない。 おそらく、アオイ少年に与えたのだろう。「いやぁ...
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 第五章『陽キャ』⑪

「『この間は、ごめんね』よし、言える!」 城永は小声で何度も練習し、暗い夜道を歩く。(もう許してくれないかもだけど……) 買ってきた惣菜が入ったビニール袋を眺めながら思い出す。『小学何年生だったか、忘れちゃったけど、城永君に振られちゃった事...
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 第五章『陽キャ』⑩

(城永君にどう説明しよう……) 自分はそう思いながら、二人に視線を向ける。 そこには、胡坐を掻いている志摩の抱き着くように、座っているアオイ少年がいた。「ねぇ志摩、キスしたい。していい?」 志摩は分からないが、アオイ少年はもう二人だけの世界...
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 第五章『陽キャ』⑨

何で、嫌な事思い出しちゃったんだろう。 遠すぎて、実際の記憶なのかも危ういのに。(そろそろ、元に戻らないと) リビングの窓を開け、部屋の空気を入れ替える。(あー寒い。もう冬なんだなぁ……) 季節はもう十二月上旬、もうすぐクリスマス、そして年...
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 第五章『陽キャ』⑧

数十分前の出来事である。 一人の少年がスマホの地図アプリと睨めっこしている。 少年の名前は『アオイ』そう城永の一人息子だ。(考えが甘かったかな……) アオイ少年はあの後、城永にとても怒られた。 気が動転して、心に無い事を言ってしまい、彼を傷...
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 第五章『陽キャ』⑦

「また、来たんですね」「見れば分かると思うが」 志摩はいつものお菓子屋に来ていた。「そうですね。でも、会えて嬉しいな」 そして、そこで働いているオメガの青年と会話をする。 というのも―― 志摩は、一時間前の出来事を思い出す。 漆はこの間、城...
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 第五章『陽キャ』⑥

最寄り駅に着き、改札前でアオイ少年と城永と別れの挨拶をする。「アオイ君、今日はありがとうね。おじさんと会ってくれて」「おじさんもラジコンありがとう」 アオイ少年は育ちが良いようで、ちゃんと挨拶ができ、いい子だった。「また、会おうね」「うん、...
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 第五章『陽キャ』⑤

食事を終えた後、お会計を済ませる為に、三人でレジに向かう。「いいよ。折角だから奢るよ」 その際、城永が自分の分もお会計しようとした為、自分がそう提案をした。「で、でも――なんか悪いし……この間も遊園地のチケットも奢ってもらったし」「いいよ。...