小説

ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』④

「着替えとタオル、ここに置いておくからね」 シャワーを浴びていると、浴室の扉を挟んで彼が自分に声をかけた。「ありがとう」 自分は扉越しに礼を言う。 彼は『ロベルト・ロバート』いう名前らしい。 思い出したという訳ではなく、テーブルに置きっぱな...
ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』③

結局、二人を見放すことが出来ず、私が蛇と戦うために、技を出して、森は半焼。 言う事にして、おじさんにお願いして、もみ消してもらったんだっけ。 彼を思い出す。『ポアリちゃん。おじさんはいつでもいいからね』 お願いをする為に対面した時、肩を含め...
ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』②

「生徒会長の蛇だったとは……」 場所は変わって学園の生徒会室。「可愛いでちゅね。お肌ツルツル」 一人の男子がソファーに座っていて、カラフルな蛇に話しかけている。 防護服を着ている生徒がそのままの恰好で、紅茶が入ったカップと、クッキーを出して...
ポアリの歩有

 第一章『確かに性別は指定しなかったけれど』①

数人の男子の声がする。「ポアリちゃん、大丈夫かな?溺れた人って、どう手当てするの?」「あれじゃない?こう両足を持って、逆さまにするやつ」「それ、喉に食べ物詰まらせた時」 自分は体のダルさで、動けずにいる。 転生です。 転生でございます。 こ...
ポアリの歩有

序 章 『努力と歩有と転生』

廊下の開いた窓から、涼しい風とそれに運ばれてきた祭囃子の音が聞こえる。 それはどこか下手糞で、時々リズムが崩れていたり、音の大きさが一定ではなかったりしていた。 どうやら、近くの公園で町内の子供達が、来週の祭りに備え、練習しているらしい。(...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』⑤

「今日はマユちゃん、顔色がいいねー。玉之丞もご機嫌そうだ」 控室で出会ったロビンソンはそう言い、玉之丞に額をくっつけ、挨拶を交わす。 蒼尾のほうはそれを静かに眺めており、少し気怠そうだ。『今日はマユの飛行機に乗るのー』「へぇ、よかったねー。...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』④

社宅の扉を強く叩く音で、マユは目を覚ます。 玉之丞を抱っこしながら、扉を開けると、そこには浩三と佐市の姿があった。 ちょっと出来上がっているようで、少し酒臭い。「お久しぶり!」「あー、ど、どうも――」 久しぶりに会う父の友人と、その息子に戸...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』③

玉之丞の尻尾がペチペチと顔に当たり、マユは目を覚ます。(思い出した、そうだった……にしても嫌な夢を見たな……後……何故、玉之丞が……) 彼は籠の中で眠っていたはずだと数秒考えるが、理由はすぐ分かる事だろう。(湿度、凄いな……) 雨が屋根や窓...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』②

北洋の指令室は、窓ガラスが張られ、周囲が見渡せるようになっている。「ねぇ、シラちゃん。もうやめよう……こんな事……北洋の工作員なら、東洋に亡命すればいいじゃない?新しい戸籍を作れば、新しい居場所が……」「駄目だ。私は北洋人として生まれ、生き...
天空の蛹(てんくうのさなぎ)1部

 最終章『終わってから始まる物語』①

255年、終戦後 海上。 波は高く、揺れが大きい気がするが、海面を覗き込んでも、暗く波が見えない。 そんな中、空母『有馬』に乗ったマユは、夜風に吹かれ、体を震わせていた。「寒い……桑子、何か防寒具貸してよ……一個だけでいいから……」 という...