2025-09

オメガバーズ

 第五章『陽キャ』⑦

「また、来たんですね」「見れば分かると思うが」 志摩はいつものお菓子屋に来ていた。「そうですね。でも、会えて嬉しいな」 そして、そこで働いているオメガの青年と会話をする。 というのも―― 志摩は、一時間前の出来事を思い出す。 漆はこの間、城...
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 第五章『陽キャ』⑥

最寄り駅に着き、改札前でアオイ少年と城永と別れの挨拶をする。「アオイ君、今日はありがとうね。おじさんと会ってくれて」「おじさんもラジコンありがとう」 アオイ少年は育ちが良いようで、ちゃんと挨拶ができ、いい子だった。「また、会おうね」「うん、...
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 第五章『陽キャ』⑤

食事を終えた後、お会計を済ませる為に、三人でレジに向かう。「いいよ。折角だから奢るよ」 その際、城永が自分の分もお会計しようとした為、自分がそう提案をした。「で、でも――なんか悪いし……この間も遊園地のチケットも奢ってもらったし」「いいよ。...
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 第五章『陽キャ』④

「アオイ君は、城永君と同じでオメガなんだね?」 態度がツンツンしていた為、勝手にアルファだと思い込んでいたが、単純に性格というか、個性らしい。「まぁ、元旦那もアルファ同士の夫婦って訳ではないから、それに関して理解あるけど。それ以外の問題がね...
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 第五章『陽キャ』③

自分の隣で寝転がっている恋人がそう言い、自分の髪を撫でる。「ねぇ、もう一回しよ」「これ以上したら、家に帰りたくなくなるからダメ」 そう言い、彼の額に自分の額をくっ付ける。(温い……とても……) ウキウキしていたデートだったが、アラサー同士の...
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 第五章『陽キャ』②

「まぁ、そんな感じ。それで、自分も漫画が好きになって、こっちの世界に来たわけ」「久間先生――」 目尻がジーンとし、感極まっているのが自分でも分かる。自分の作品、初期のものは読者受けが良くなく、短期連載で終わった。それを好きだと、その作品がき...
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 第五章『陽キャ』①

陽キャ。陽気な人間、その名称をいう。「春島先生、シャッター切りますよ。さあ笑って!」 売れっ子漫画家が自分の肩を寄せ、編集者が構えたカメラに向かって笑顔を作る。 現在、午後二時過ぎ。 真っ白の壁紙の部屋は、とても無機質で冷たい印象で、そこに...
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 第四章『覚悟』⑨

リビングのテーブル前、定位置に座り、軽い食事を二人で取る。「すごく美味しそうだ」 志摩は自身の大きな口に青椒肉絲を箸で運んだ。「うまい」「デパ地下のやつって何でこんなに美味しいんだろうな」 怒っていると思っていた志摩は、そんな事が無かったよ...
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 第四章『覚悟』⑧

城永との買い物は、案外楽しいものだった。「まだ、時期早いからかな?マフラー売ってないね」「うん、そうだね」 ショッピングモールで、服屋を回り、コーヒー専門店を見つけ、二人で一服する。 そのコーヒーが思ったよりも数倍香ばしく、美味な物で、その...
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 第四章『覚悟』⑦

二人を見送った後、コスモスの花たちに囲まれ、志摩と肇は話をする。「どう?落ち着けた?」 志摩はそう言い、肇の顔色を窺う。「志摩、なんかごめんね」「どうした?何か、城永に意地悪な事されたか?」 志摩はトイレに行っていた為、状況がまだ分かってい...